不動産売却における長期譲渡のポイントを押さえておこう

5年以上所有した不動産を売却する場合は“長期譲渡”という扱いになり、そのときに発生する利益(所得)は“長期譲渡所得”に該当します。
今回は、長期譲渡の細かいポイントについて解説しますので、長年住み続けた自宅を売却し、住み替えをしようと考えている方などは、ぜひ参考にしてください。

税額を計算する際の流れ

不動産売却における長期譲渡を行った際は、売却益に対して以下の所得税と住民税、復興特別所得税がかかります。

・所得税:15.315%
・住民税:5%
・復興特別所得税:2.1%

所有期間5年以下の不動産を売却する短期譲渡の場合、上記の税金が合計40%ほど課税されるため、税金面では長期譲渡の方がかなり優遇されていることがわかります。
また、長期譲渡所得にかかる具体的な税額を計算する際は、以下のような流れで行います。

・売却益を把握する
・控除額を差し引く
・税額を算出する

売却益を把握する

まずは、不動産売却における長期譲渡により、どれくらいの売却益(譲渡所得)を得たのかを把握するところから始めます。
以下の計算式に数字を当てはめることで、純粋な譲渡所得を算出できます。

・売却収入金額-(取得費+譲渡費用)

取得費は、売却対象となる不動産を購入したときにかかった税金、仲介手数料などを指し、譲渡費用は売却時にかかった仲介手数料、印紙税などを指しています。
ちなみに、このとき売却する不動産はすでに建築から数年経過したものであるため、取得費からさらに以下の計算式で算出した減価償却費を差し引く必要があります。

・購入時の物件価格×0.9×償却率×経過年数

控除額を差し引く

不動産売却における長期譲渡を行う際、3,000万円控除などの制度を活用する場合、譲渡所得から控除額を差し引きます。
ちなみに、3,000万円控除には、居住用不動産用のものと、相続した空き家用のものがあり、これらは利用するための条件が異なります。

税額を算出する

算出された譲渡所得に、先ほど解説した所得税、住民税、復興特別所得税をかけます。
こうすることで、不動産売却における長期譲渡を行った際の具体的な税額を弾き出すことができます。

所有期間10年以上の長期譲渡

不動産売却における長期譲渡は、所有期間5年を超える不動産を売却する場合を指しますが、所有期間が10年以上の場合は、確定申告によって税負担を減らすことが可能です。
具体的には、居住用不動産を売却する場合に、所有期間10年を超えていることで、諸経費を差し引いた売却益が6,000万円以下の部分について、マイホームの軽減税率の特例を受けることができます。
こちらは、前述した居住用不動産の3,000万円控除と併用可能な制度であるため、利用できる場合は大幅な節税につながります。
ちなみに、軽減時の税率はトータルで14.21%となり、特例がない場合と比べて6%以上も税負担が少なくなります。

所有期間10年以下でも節税する方法

不動産売却における長期譲渡を行う際、所有期間が10年以上であればマイホームの軽減税率の特例を受けられるという話をしました。
では、5年以上10年以下の場合、それほど節税することはできないのかというと、決してそのようなことはありません。
例えば、譲渡所得を計算するときの取得費を正確に算出すれば、支払う税額が少なくなる場合があります。
なぜなら、正確な取得費がわからない場合、譲渡所得の5%を概算取得費として譲渡所得を計算することになり、この方法だと実際支払った金額よりも取得費が少なくなるおそれがあるからです。

まとめ

ここまで、不動産売却における長期譲渡で押さえておきたいポイントをいくつか解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
長い間住み続けた愛着のある不動産を売却する際には、なるべく好条件で売却したいと考える方も多いでしょう。
そのため、本記事で解説した制度の併用、節税方法などについては、必ず把握しておかなければいけません。

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